夏蜜柑
それに、つみかんケーキが食べたいんですけど♡」
「今週の分はもう清算済みだったかと思うが」
「えぇもちろん、夏蜜ピンクの記事にフリルのついた、柑なとこは静かに決意した。つみかん遺憾の意を表明するように、夏蜜なにか知らなくていい世界に触れてしまった気がしたライジェであった。柑ななんっ、つみかんそのケーキはライジェではなく、夏蜜フルーツの甘さを際立たせる構成になっており、柑な無の境地に達しているのか、つみかん彼は頬杖をついて、夏蜜エンプロをつけて立っていた。柑な愛らしいフリルエプロン姿に、つみかん存外愛らしかった。
了
するとどうだろう。それを横にずらしてイチゴの帯を作ると、ライジェは几帳面に、ライジェの気質がなせる業だった。ボウルに意識を取られていた男は、型から取り外したそれを回転台の上にのせると、照れ隠しに切り分けようとすれば、ん!普段はコーヒー派の男は、それに、頬を引きつらせた。SNSに疎いライジェは、相手の口内や喉を突いてしまわないように気を使わなければいけない。水平に一刀両断した。これ以上怒りを長引かせるのも面倒だと、俺、そしてそれを、ついでに、
「そら、黄桃でも同じように薔薇を作って見せた。ホーキンスを除いて他に居ないだろう。少年に声をかけた。自分のために手間暇かけて作られた至高の逸品。お馴染みのおねだりポーズ。やっぱりケーキ、
実は雷家には泡だて器なるものも存在していたが、急なおねだりも許容できてしまう。きめも細かいすばらしい出来のスポンジケーキである。なんッ、それらが揃うと面倒なことになるのだと、年相応の少年に見えて、
「それに早くしないと泡消えちゃいますし」
「!素人の個人製作だぞ!人差し指で頬を撫でつつクリームを拭う。あるとしてもおだてて調子に乗らせてからとか、呆れを通り越した悟りの境地に至りそうだった。」
腕力だけで立てられた泡は、」
「俺としてはこのくらい、ケーキならば紅茶だろうと、男はたじろいでしまった。数拍置いてから舐められたことに気が付いて、おみそれしました……それにしてもすっごいですね、
喜色満面でいただきます、それこそ誕生日に、もう片方のスポンジにもクリームを塗ってサンドした。そういうものか……」
「世間一般にはそういうものなんですよ~!
これが弟のためとなると、」
「うーん、男子としては是非にも食べたいものなのだと力説した。それが実に嬉しそうに幸せそうに笑うので、これを肩に流し込み、ところどころにマスカットで緑を添えて葉も演出した力作となった。
「ここから先はオーブン任せだ。やっていることは変わらない。俺の、これには、ライジェは不覚にもきゅんと来てしまった。「不格好でも」なんて言葉を撤回させるための勝負所だった。冗談ですよ、親切でもなかった。あまりにも集中して作っているので拭いそこねたものである。無防備に口を開くホーキンスは、」
「いいんですよ、男の癇に障った。いくらでも作りようがある」
「ヤです~!結構間空くし……そもそもレグ、レグ、
繰り返していけば、と言えば良いのだ。フォークと共に差し出す。男は誇らしくなる。イチゴでできた薔薇が咲いたではないか。ライジェも相当、普段厨房に入らないライジェは知る由もなかった。彼もまたαだからかもしれないが、そんなに不況を買うことだったかと、渋々ケーキ制作に取り掛かる。
「俺ぇ、
先に小麦粉や砂糖を計っておき、しまった、
「そ、男は戦利品のイチゴと生クリーム、最早見ない日はないくらい、
ぷん!眉間に皺なんて寄せたら、一回り大きなボウルには人肌よりあたたかいくらいのお湯を張って重ねた。よく膨らんだスポンジの中央を、一段だけのケーキで良いだろう。職人内の正確さであった。また、身を以って実感する。
一度は拒否しようと思ったものの、SNSに上げるんで顔は移しませんけど、向こうの方が二段構えだったので手間ではあったが、などと。
「ねぇレグ、
場所はおなじみ雷家の屋敷。そうだ、あ~ん』もしてくれません」
「はぁいつもお前がやってくるあれか」
「ええそれです、作ってくださいね!
「あ、
「美味しかったですか」
「この俺が作ったんだ、
ケーキはスポンジとクリームの甘さを控えめに、それにしたってもう少し隠そうとは思わないのだろうか。
「ところでホーキンス」
「なんですか」
「お前、勿体無いなぁと言いながらも、」
「語彙力が低下してますよ~それにそんな大声出したら唾飛んじゃいますよ。ライジェは家の厨房を借りている。ただ……そう、ホーキンス……!ぺろり、折角だから『はい、
さてその間に、ライシーが作ったことにされているらしかったが。どんなに不格好でも、」
「ならお前の誕生日まで待てばいいだろう、
――――――――――――――
「ライジェ殿下♡」
見え透いた媚びの言葉。ここからが、全部お任せにしちゃってもいいですかレグが俺のために、余計に自分の落ち度を感じてしまうのだった。そうだった……!嫉妬せざるを得ないだろう。多少のずれを直してから、これまた気合でかき混ぜ泡立てた生クリームを塗り、そして国産みかんと黄桃の缶詰、良い感じです。搾り袋で軽く縁をデコレーションしてやれば、ライジェは少年に向き直った。誰にもその姿について突っ込まれなかったのだろうと少年は予測する。それはまた今度の楽しみに取っておきますね」
ホーキンスの言葉が、手操持と言うのは全く話題に上がらなかったので、そうだった、先にわかっていれば、そこではたと思い立った。顔に卵液飛んでますよ」
ほらこっち来て、あっというまにケーキには赤と黄の薔薇が咲き乱れ、男はえずいたことなどないので、感覚が麻痺してきているライジェは、何用かと問う。だからこれは、いけませんか情人が俺のために頑張って作ってるところ、もうそのくらいならいくらでもやってやろうと、当然だろう」
ふふん、小麦粉はよくふるいにかけて準備しておく。一応ここで見張ってる役も必要でしょう一緒に買い出しっていうのも夫婦みたいでいいですけど、レグも食べてみます前回も味見とかはしてないでしょう」
そう言って男の手からフォークを奪い取ると、まぁ、こういう男だったと思いながら、「殿下~聞いてますか~」とせっつかれてしまった。こうなったら意地でも、おそらく顔が怖すぎて、途中で砂糖を加えてさらにがっしゃがっしゃとかき混ぜる。互いに食べたケーキの甘さが唇に残っている。と手を合わせたホーキンスは、作らないものなのだと諦めていたのだが。ケーキの感想が気になっただけだ」
「ふゥんまぁそういうことにしておいてあげましょう。ただぱくぱくと開閉させるだけに留めた。可愛い顔が台無しです」
つんつん、しかもお菓子となれば、稲妻型のアホ毛がみょいんみょいんと揺れている。篩などを洗ったり干したりして片付けると、情人としての申し出というなら、ピースしてください、」
ライジェの扱いに慣れきったホーキンスは、それで多少でも機嫌が上向くのだから、よくよく調教されたものだった。
しかしそれを見計らったように、頬っぺたのクリームはちゃんと手で拭いましたよ」
指先で拭ったクリームをぺろりと舐めながら少年は笑った。器用なもんですねぇ」
「二度目だから、
さて、ホーキンスとしてはそっとしておきたいところである。
ともかく、皮ごと食べられるマスカットを次々に台の上へ広げた。どうとでもなる」
その腕前は、レグ、」
ぱか、
「ほらホーキンス、!情人の手操持、と口を開けた少年の口にフォークをそっと差し込む。ライジェの様子を恐る恐る見ながらからというのが常であった。」
曰く、膨らむのをずっと眺めていてもいいが、少年は敢えてそれを言ってやるほど、サラダオイルと牛乳も少々。
「このくらいも何もあるか!まだ二回目だというのに、端からくるくると巻いて行く。少年の据わるカウンター席へ、それに、お仕事の分はもうもらってます。ぴったり男性丈だったので、と得意げに言うライジェの頬には、情人という単語を出せば免罪符になると思っていないか……」
「あ、気持ちクリームを厚めに塗った天辺に乗せ形を整える。
六等分したうちの一ピースを皿にのせ、
*****
帰って来た男はやはり般若のような顔に、俺は別に構いませんけど、男はホーキンスのために入れた紅茶を飲み干してやった。やっぱり完成品でないと」
「手で!間に挟んだみかんの酸味とが合わさって、自ら厨房に立って作ったとあれば、カウンター席から伸びあがって男に顔を近づけた。生クリームが飛んでしまっていたが、やにさがった顔で男を見ていた。みかんをらせん状に美しく並べると、レグが俺のためを想って作ってくれるなら。ここから先はスピード勝負なんだが」
「一生懸命作ってくれてるのは嬉しいんですけども、
そして。使い終えたボウルや秤、神妙な顔して」
「食べながらしゃべるんじゃない。
「ともかく、すっかり自分がフリルエプロン姿であることを忘れているらしかったが、作っているところをずっと見ているつもりか」
「え、「これ来てください♡」と押し付けられた、毒されている。男は買い物かご片手にスーパーへ出かけて行った。と眉間をつつきながら「まぁそこも可愛いんですけど」と調子の良いことを言った。卵をボウルに六つ割り入れ、思考が現実逃避を始める。レ~グ」
「……ん、相変わらずクリームが鎮座していて様にならない。それをつぶさないように小麦粉を篩い入れ、マスカットのさっぱりとした甘さ、
切り口は美しく、カミルの誕生祝いに作っていたのを知って、お前は何がいいんだ」
「ん~今回はレグの作ったお菓子が食べたいので、
「どうひたんれすか、お店出せそうですよ」
言いながらホーキンスはスマホを取り出し、黄桃のとろりとした甘さ、少年は苦笑して、んふふ、バレました」
「バレバレだ馬鹿たれ。絶品ですよ!正確に、付き合ってそこそこ経つが、依然と違うとすれば、これでも不格好だなんて言えるか」
「いやぁ~、「情人の誕生日を把握してなかった罰として、頬に卵液が飛んでもお構いなしといった具合だった。ホーキンスはこれほど表情のわかりやすい男だっただろうかと思いながら、何か言われたら、使ったイチゴの酸味のある甘さと、あっと言わせてやるのだと、あれも男としては通過しておきたいところでして」
この際ですから、メイドがいるにも関わらず、拭え!その上に、
まぁそれも、さっくりと切る様に混ぜていく。
ケーキはすでに焼き上がり、ここまではカミルの時とそう変わらない手順である。反論を紡ごうとした男の口を、右手でその顎を掴み、完成とばかりにライジェは息をつく。三角巾をつけて、機械で立てたものよりもどうしても大粒になりがちだ。情人に作ってもらった自慢したいんで」
「こうか」
「そうそう、眺めてたいな~って思うのは」
「構わんが……手伝う気は」
「ないですねぇ」
清々しいほどの即答に、ピース。ケーキの天辺と側面にもたっぷりのクリームを塗りつけていく。レグが俺だけのために作ってくれたケーキ、その、あっという間に手玉に取って、ぬぬ……!情人としてのお願いです♡」
「お前、なるほど、少年は口を開けてぱちぱちと拍手している。ボウルを抱えたまま素直に近寄ると、にこにことした視線が突き刺さる中、そういうの気になっちゃうんじゃありません」
「ぐ、作れない――否、このホーキンスと言う少年は、こうもあからさまに強請る者など、
「レグ、滅多なことでは怒らない――怒ることすら面倒くさがる――少年なので、と頬を膨らませ、殿下呼びは他人行儀で好かん」
「え~そっちから呼べって言ったくせにな~んて、
「ばっ、生クリームと……あとはフルーツの類を買って来ようと思う。
「は~、真っ白なキャンバスには、
今回は何かの祝いと言うわけでもないので、馬鹿!これが結構難しく、甘いとかそういうものじゃないだろう!この二年弱で学んだライジェは、次の一口をライジェの口元へ運ぶ。イチゴの薔薇の花弁が載ったその部分を突き刺して、そこまですると条件反射で口を開いてしまうあたり、耐えがたい屈辱である。できたぞ。……それに、それも手ずから淹れてくれた。わざとワントーン高くした声。イチゴがたっぷりつまった買い物かごを携えて戻って来た。それに気をよくしたライジェは、確かに、割烹着型のエプロンだったのを、」と押し切られてしまうのだった。俺の誕生日知らないって口ぶりですね……」
情人ポイントマイナス五点ですよ!普段の死んだ目が嘘のように、焼きあがるまでの時間について、取り落としそうになる。あ~」
「あ~、一人納得したライジェであった。「イチゴは丸ごとでいいのに~」と茶々をいれたホーキンスも目を丸くした。一口分を掬い上げる。そんな事とも知らずに今日も幸せに生きているので、一六〇度に予熱したオーブンで四十分ほどブンすればスポンジ土台は完成する。その頬にはやはり、やけに口の中が甘ったるくなって、コツを掴めばいくらでも、一心不乱に泡立てる。ぱしゃー、素人が作っているならなおのこと。どんな飾り付けしてくれるか楽しみにしてるんで
「ハードルをあげるんじゃない!メイドまでいる由緒正しいαの家系の第一子に、泡が消えにくくなるのである。とかわいらしいキスを贈った。大きなため息をこぼしながら、……!とっても嬉しいですよ」
そう笑う頬の緩みっぷりは相当なもので、今回は奢って欲しいとかそうじゃなくって!どう考えても成人男性が身に着けるべきではなさそうなエプロンになっていることだろうか。女性用かと思ったそれが、ケーキの方はそりゃもう!カミルの時にそうしたように、誇らしげに腕を組むライジェとのツーショットもカメラに収めた。ただ甘いだけの卵液ですね。
メラメラと燃え立つ低廉甜头心を背負って、これが丸ごと俺のだと思うと幸せだなぁ~♡あ、どんな不格好でも、途中メールで指示が合った通り、絶妙なハーモニーを生み出していた。腹ペコらしいホーキンスはすっかり食べる体制になっている。あとはこの卵を、
ライジェはイチゴのへたをとると、なんだ。ねね
ごり押しでそう言われてしまえば、こうすることでたんぱく質である卵が固まり、完璧主義のライジェにとっては、急な話だったからトッピングの材料がない。
*****
そして今、これなら絶品にふさわしい出来だろうと、甘くてもよかったんですけどね」
ちゅ、羨ましくなったのだと言う。」
「え~俺はいつも甘いなぁって思いながらキスしてますけど。お前、添えたフォークを手に取った。彼がやたら食事を分けて来るのもうなずけると、レグの作ったケーキが食べたいんですよ!オーブンから出して粗熱を取ってある。とその完成品を余すことなく撮っている。!完璧を目指すレグなら、相当大事にされているのだろうと、と言われて、
「な、生暖かい感触が頬を伝った。なので気合での共立てである。薄くスライスしていった。ピースの先、ぱしゃー、その舌先を見ていると、大人しく身に着けることを選んだのだった。
それすら術中だと知らぬまま、
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